ひつじの寝言 小話という名の蛇足 忍者ブログ
日記や更新記録などをまったりと。 別名「今日のアスランさん」…落書き絵日記です。
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2009 St.Valentine's Day 小話

「休日出勤」Side:A


年度末が近いせいか連日の残業でも間に合わず、とうとう土曜日にまで仕事がずれ込んでしまった。
幸いにも、クライアント先での打ちあわせは思いの外スムーズに話がまとまり、予想より早く終えることができた。
思わぬ誤算に胸が浮き立つ。
といっても、寂しいことに今日の予定はこれだけで、急ぐ理由は何もないのだけれど。
でも、明るい時間に帰れるのはやはり嬉しい。
会社に戻らずこのまま直帰して、受注書は来週までに家でまとめればいい。
そうだ、昨日発売された新刊を買って帰ろう。
それからクリーニング店に寄って仕上がりを受け取ってこよう。
ついでに、ほんの少し寄り道をして公園を抜けて行こうか。

肌に感じる春の気配に気分が昂揚したのか、アスランはいつになく上機嫌で、脳内は饒舌だった。
冬の間、しんと静まり返っていたはずの公園は、人々が集い賑わいを取り戻していた。
枯れた木々の狭間からは、まだほんのり暖かな光がこぼれている。
ふと視線を戻すと、僅かな光を反射させ輝く銀髪の凛とした立ち姿が目に入った。近づいて声を掛けようかと思った矢先に、遠くから張りのある声で名を呼ばれる。

「アスラン!」

「イザークも仕事だったのか?」

「お調子者の同僚の尻拭いだ。もう、帰るところだがな」

悪態をつきながらも表情は優しい。イザークも早く帰れて嬉しいのだろうか。
ああ、そうか、今日はバレンタインデーだ。
何か予定があるのだろう。あまり長く引き留めたら悪いよな・・・。

アスランがぐるぐると考えを巡らせていると、イザークも同じようなことを考えていたのか、唐突に切り出す。

「チョコレートはもらったか?」

「へ?ああ、昨日、総務の女の子達から義理チョコをもらったよ」

アスランは答えながらイザークの眉間にしわが寄ったのに気付く。
ああ、イザークは潔癖そうだからそういうの嫌いなんだろうな。
ぼんやりそんなことを考えていたのがばれたのか、不機嫌そうにイザークが質問を重ねてくる。

「今日は?これからどこかへ?」

「今日は残念ながら予定もないよ」

アスランは笑いながらも本当はちょっと複雑だった。
チョコや彼女が欲しいわけではないが、こういったイベントごとに本領を発揮する幼なじみのモテ男に、散々惚気られながら説教されるのにも、いい加減うんざりしてきたところだ。
自嘲気味のアスランにイザークはニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。

「なんだよ」

「いや、俺もだ。コーヒーでもどうだ?ミルクと砂糖は1つずつだったな」

公園内のケータリングカーを指差し、アスランの返事を待たずにイザークはコーヒーを注文する。

会社は同じだが所属部署が違うため、一緒にコーヒーを飲んだのはほんの数回だ。まさか好みを覚えていたなんて。
優秀な営業はさすが気が利くんだな。さぞかし女性にもてるのだろう。
もう少し笑顔を見せればホストも向いてるんじゃないか?
などと、的はずれなことを考えているとイザークが鞄を小脇に挟み、両手をコーヒーに塞がれて戻ってきた。

「ごめん!気が利かなくて」

慌てて駆け寄るアスランに差し出されたコーヒーは、ほんのり甘いチョコレートフレーバー。

「熱いから気を付けろよ」

熱さを覚悟していた手に、一瞬だけ触れたイザークの指先は冷たかった。

「ありがとう」

熱くなった頬は、温かいコーヒーと沈み始めた夕陽のせいにしてしまおう。
甘い香りがくすぐったい。
休日出勤もたまにはいいかな。
外で会ったイザークはいつもと違う気がするし。
『もう少し話しをしたい』そう言って食事にでも誘ったらどんな答えが返ってくるのだろうか。
逆光に目を細めてコーヒーを飲むイザークの端正な横顔を見つめながら、アスランは考えていた。

************************************

春が近づいていますねv 今日は日差しが痛いくらいでした。
二人は会社の同僚というリーマン設定です。
イザークは敏腕営業、アスランは飛び抜けたセンスのクリエイター(笑)
こんな駄文で補足したかったのは、今日GALLERYにUPした【CHOCOLATE】というイラストのコーヒーがチョコレートフレーバーだったということです(笑)
・・・なんだ、この数行でよかったのか!(爆)
本編沿いのシリアス路線に挫折して、肩の力を抜いたら調子に乗り過ぎました。
アスランが幸せならなんでもいいや!そんな結論です。
ハッピーバレンタインvvv

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