ひつじの寝言 『寝顔』いただきましたvvv 忍者ブログ
日記や更新記録などをまったりと。 別名「今日のアスランさん」…落書き絵日記です。
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うわああああーい♪♪♪
またまた嬉しい頂き物をしてしまいました!
『鹿の屋』shinoさんが誕生祝いに素敵なお話を書いてくださいました。
4月9日の日記の落書き(アスランさんの寝顔)を拾ってくださったようです。
shinoさん、ありがとうございます!!!(感涙)
疲れなんて一気に吹っ飛びましたvvv

では早速、お裾分けをどーぞ!!!
あ、最後に落書きがありますが、思いっ切り背後注意です!☆お気をつけて☆



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 『寝顔』
 
 

俺がアイツの寝顔を初めて見たのはザフトアカデミーの寮だった。

「イザーク、悪いけど、俺のベッドを使ってくれ」

それはアカデミーで戦闘シュミレーションの課題をやっていたラスティの懇願から始まった。その時、ラスティとディアッカはペアを組んでいて一緒にレポートを作成していたのだが、どこかに数値の入力ミスが有ったらしく、とっくに終わっている筈の作業は深夜にまで及ぼうとしていた。同室者の俺に青褪めた顔をしたラスティとディアッカが上目遣いでラスティのベッドを使ってくれと訴えるのに、俺は

「フンッ、無能者が!!」

と、怒鳴りつけた後、渋々、ラスティの部屋へと向かったのだ。ラスティと、その同室者アスランが使っている部屋は俺とディアッカが使っている部屋の斜向かいで、廊下に出れば、すぐに着くのだが、俺は暫らくの間、目的の部屋の前で立ち止まっていた。

確かにラスティとディアッカがガタガタしているので煩くて眠れないのだが、だが……この部屋にはアイツがいる。アスラン=ザラ、パトリック=ザラ国防委員長の嫡子にして、あのラクス=クラインの婚約者、そして忌々しい事にザフトアカデミートップの成績を誇る嫌な男。常に物柔らかに振る舞い、誰に対しても声を荒げる事が無い、張り付いたような薄い笑みを湛えた男。

アイツのすかした顔を見る度に俺はムカムカして、怒鳴りつけ、殴りつけたくなるのだが、本当に忌々しい事にアイツは俺が怒鳴ってもサラリと聞き流すし、殴りつけようにも実技でもアイツの方が強い。そして非常に良い子のアイツはバックボーン抜きにしてもアカデミーでの教師陣の覚えが良くて、すぐに俺の方が悪い事になってしまう。

いや、まあ、確かに俺の方が悪い事も多いのだが……。

「ラスティ、部屋を替わるのは良いが、お前の部屋にはアイツがいるだろう。アイツが!! こんな時間に部屋に入っても大丈夫なのか?」

「あー、平気、平気、アスランさ、意外と眠汚いから目を覚まさないよ」

「本当か?」

軽い返事に疑いの眼差しを向けるイザークにラスティはニカッと笑って言った。

「本当だよーん。普通に暗証番号を打って部屋に入れば、アスラン起きないよ。でもー」

「でも、何だ?」

「でも、イザークがアスランの事、襲ったりしたら起きちゃうよん。アイツ、寝起き、超機嫌悪いから襲ったりしちゃダメだよーん。どんなにイザークがアスランの事好きでもさ」

「誰が襲うかー。ボケェ!!」

俺は怒鳴ると同時に手近に有った枕をラスティに投げつけて、自分の部屋を出た。

そして、今、アイツのいる部屋の前に立っている。


「ここで考えていてもな……」

10分ほど経っていただろうか?

俺は意を決して、部屋の暗証番号を押した。俺がディアッカと使っている部屋と全く同じ作りの部屋の扉は軽い電子音を立てて速やかに開いた。

部屋の中は暗かった。既に時間は遅く寮内の消灯時間は過ぎているから暗いのは当然だが、素早く部屋の中に入った俺の目は部屋の壁側に設置されたベッドに釘付けになった。

向かって右側のベッドにアイツが寝ていた。

常に取り澄ました嫌な顔をしたアイツではなく、健やかな寝息を立てている穏やかなアイツが薄いヘッドランプの明かりに浮かび上がっていた。俺もだが、アイツも肌が白い。そして俺とは決定的に違う濃い青みがかった黒髪が白い枕カバーの上に散らばっていて、一幅の絵画のように美しいコントラストを描いていた。

俺はアイツの初めて見る顔に思わず息を漏らしていた。

どうかしている。

アイツの顔なんて見飽きている。大体、授業も食事も全部一緒だし、政府関係のレセプションだって一緒なのだ。それなのに初めて見るアイツの寝顔から目が離せない。

起こさないようにソロリ、ソロリとラスティのベッドに近づく間も、俺はアイツの寝顔に見入っていた。

ラスティのベッドの脇に立ったまま、俺はアイツの寝顔を見つめる。俺の物とは全く違う濃い陰影を落とす長い睫、血管が透けて見えるほどに白く滑らかな肌、形良い頤、丸みの残る頬、ほんのりと色づいた柔らかそうな唇。普段の大人びた優等生ぶりからは想像もできない幼さの残る顔だった。

一瞬、枕に散らばる青みがかった黒髪に触れてみたいと思った。どうして、そんな事を考えたのか、自分でも良く分からないが手を伸ばしかけて、ハッと気がついて止めた。

ベッドの反対側に廻って備え付けの椅子にズボンと上着を脱いで掛けると、俺はラスティのベッドに上がった。アカデミーでは毎日、起床と同時にベッドのシーツを替える事が義務付けられているからシーツは綺麗だった。

俺が服を脱いだり、ラスティのベッドに上がったりしているのにアスランは全く目を覚まそうとしない。健やかな寝息を立てて深く眠っている。

一旦、上掛けを剥いでベッドの中に入ったが、俺は隣のベッドに寝ているアイツが気になってどうにも寝付けなかった。普段の生意気でムカつく大人びた顔からは想像もできないほど、アイツの寝顔が可愛かったから、俺が思い込んでいたよりも、ずっと子供の顔をしていたから、だから……変な事を考えてしまったのだ。さっき、アイツの髪に触れたくて手を伸ばしかけた自分が恥ずかしくて、俺はアイツに背を向けて目を閉じた。明日も、がっちり授業が入っている。ディアッカとラスティのお馬鹿の為に俺の睡眠時間は削られている。だから少しでも早く寝なければ……またアスランに負けてしまう。

俺は一刻も早く寝ようと、アイツに背を向けて目を閉じた。

 
でも、瞼の裏にアイツの濃紺の柔らかそうな髪の毛や、滑らかな白い頬、薄紅の唇、細かに震えていた長い睫が浮かんできて、どうにも眠れない。

暫らく馬鹿な事を考えていないで寝ようと頑張ったが、とうとう俺は起き出してベッドを降り、寝ているアイツの側に立った。

『意外とアスラン寝汚いから』

ラスティの言葉通り、同室者ではない俺が深夜に部屋に入ってきたのにスピスピと寝ているアイツは本当に寝汚いと思った。

仮にもザフトアカデミートップなのだから、もっと警戒しろ。俺が入ってきているに起きない貴様が悪い。

自分がこれからしようとしている変な行動に言い訳するかのように、自分の部屋の自分のベッドで寝ているアイツに理不尽な事を考えながら、アイツの側に立ち、枕に散らばる髪の毛に触れようとした瞬間だった。

 
いきなりパチッと目を覚ましたアスランが自分の枕を俺に投げつけてきたのだ。そして、俺がその枕を顔面で受け止めた直後、俺は背中から床に叩きつけられていた。


「アレ? ……イザーク? 何しているんだ、俺の部屋で?」

俺の上に跨り、左手で俺の肩を、右手で俺の首をギリギリと押さえつけながら、アイツが驚きに目を見開いて呟く。

「……」

俺は答える代わりに必死に自由な左手を動かして首からアスランの右手を剥がそうとした。その俺の左手に気が付いて、アスランが慌てて首を押さえつけている右手を放した。

俺はゲホゲホと咳き込みながら、俺の上に跨るアイツを押しのける。俺が左手でアイツの体を払いのけようとしたので、アスランは速やかに俺の上から退いた。


「で、何で、イザークが俺の部屋の居るんだ。それも、こんな時間に?」

取りあえず、俺の上から退いたアイツが咳き込む俺の直ぐ横に立って、時計を確認してからキツイ眼差しで睨みつけて問う。時計は夜中の1時を示していた。俺も何とか呼吸を整えてから、きつい声で答えた。

「今夜、ラスティと部屋を替わったんだ。あの馬鹿、ディアッカと二人で、まだ課題をやっている。どこかにエラーが出ていて、それが何処か、まだ分からない」

俺は強かに打ちつけた背中が痛むのに眉を顰める。

「……まだ、あの課題やっているんだ。言ってくれれば手伝ったのに」

「ああ、貴様がそう言うから、ラスティは俺の部屋に来たんだろうが!! 貴様、何でも手伝うとか言うな。いい迷惑だ。あいつ等も自分で出来る。何しろ、赤だからな!!」

「……あ、そう」

俺のきつい言い様にアスランは軽く眉を顰めると、すぐに自分のベッドに入ろうとした。

「……アスラン、貴様、俺に一言の謝罪も無いのか?」

「……謝った方がいいのか、イザーク?」

「いらんわ!! 俺も寝る!!」

アスランの皮肉な物言いに俺はカッとなって怒鳴りつけると、自分もさっさとラスティのベッドに潜り込んだ。

アスランは先程の立ち回りからは信じられない事に直ぐに寝息を立てて眠りに落ちたが、俺は悔しさと情けなさにムカムカして少しも眠れない。しかも時間が経つと、アスランに組み敷かれて叩きつけられた背中がズキズキと痛み出した。本当は起き出して消炎効果のある冷却スプレーで治療した方がいいのだが、またアスランを起こしてしまって馬鹿にされるかと思うと、もう一度起き出して薬箱を出す気になれなかった。

 
結局、俺は悔しさと痛みから碌に眠れないまま、朝を迎えて、アイツが起き出す前に起きて自分の部屋に戻った。信じられない事にアスランは俺が部屋を出るときまで、まだスピスピと気持ち良さそうに寝ていた。


あんなに寝こけていて、アイツ、今日は絶対に遅刻する。いや、遅刻しやがれ!!

俺の心からの叫びにも係わらず、俺と死にかけのディアッカ、ラスティが朝食のテーブルについて僅か3分後に、ニコルと共に食堂に現れたアイツは何事も無かったかのように朝食のトレイを持って、俺達のテーブルへと近づいてきて言った。

「イザーク、何時、部屋から出たんだ? 夕べは悪かった。背中、痛くないか?」

「うっ、うるっしゃーい!! 俺は貴様のように軟弱ではないわ。大体、貴様こそ、あんなにグースカ寝ていて、良く時間に起きられたものだな!!」

俺は悔しさと恥ずかしさに顔を真っ赤にして怒鳴っていた。朝っぱらから食堂で大声を出した俺に周囲の生徒達が何事かと目を向けたが、俺の前に立つアスランの姿を認めると即座に視線を逸らす。俺がアスランを怒鳴り、絡むのは日常化しているので誰も関わろうとしないのだ。

「あー、うん。俺、寝起きはいいんだ。寝つきもいいけど……。でも、イザークの背中が痛くないなら良かった。俺、寝ぼけていて力加減できなかったから痛くしなかったかと心配だったんだ。でも、流石はイザークだな。受身も完璧……」

「うるっさい!! 貴様、ベラベラと余計な事を言っていないで、さっさと飯を食え。遅れるぞ!!」

余計な事をベラベラとしゃべり続けるアイツを一括して黙らせて、俺は朝食を流し込んだ。昨日、寝ていないし、ぶつけた背中も痛いから食事は不味かった。

しかし無理やりに不味い朝食を流し込む俺の目の前でアスランとニコルが笑いながら朝食を食べていた。こいつらは昨夜ディアッカとラスティが苦戦していた課題のパートナーで、余裕で課題を仕上げて昨日はたっぷり休んでいる。俺は……無能な奴と組まされた為に、ほとんど一人でやった。

そして俺が忌々しく思いながらアイツを睨みつけていると、俺の横に座っていたラスティがニマニマと俺を見つめているに気がついた。


「何だ、ラスティ? ニマニマと気持ち悪い」

残っていた牛乳を流し込んだ後、俺が不機嫌な声で聞くと

「うーん、べっつにー。ただ、アスランの寝顔、可愛かっただろ? つい襲いたくなっちゃった? イザーク、アスラン大好きだもんねー」

と、更にニマニマしながら言いやがった。俺は一瞬、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けて口をアングリさせた。が、次の瞬間、我に返ると怒鳴りつけていた。

「うっ、うるっしゃーい!!」

 ガシャン……

俺は思わず、手にしていた牛乳のパックをラスティに投げつけて席を立っていた。席を立ったときに制服の袖にトレイがひっかかったらしく、派手な音を立ててトレイと食器が床に散ったが、俺は怒りと恥ずかしさから後も見ないで走り出ていた。だから、その後、俺とアスランの間に変な関係が有ったと、まことしやかに噂が流れた事も知らなかった。

だから、それから一週間後、アイツが俺を校舎の裏に呼び出して、赤い顔をして

「あの、イザーク、俺、困るんだけど……。その、俺、一応、婚約しているし。だから、その、困るんだ。そういうの」

と言い出した時、何の事か、さっぱり分からなかった。

「何が言いたいんだ、貴様? そのゴニョゴニョ言っていないで男なら、はっきり言え。一体何の事だ?」

「だから、その、つまり……」

「つまり、何だ? はっきり言えと言っているだろうが!!」

俺はアイツの常には無い歯切れの悪い物言いと、やたら赤らんでいる顔に焦れて大声を出していた。その俺の大声に弾かれたように体を震わせたアイツも叫んだ。

「だから、俺がお前を押し倒してやったと言われるのは困るんだ。確かに、あの夜は寝ぼけていてお前に痛い思いをさせただろうが、だからって、あんないかがわしい噂は困る。俺、婚約者がいるし、その、本当に何もなかったのだから」


「な、なんだとー!! 俺が貴様と何をしたって言うんだ!? あの夜だと、何の事だ?」

俺は考えもしなかったアイツの話に目を見開いて叫んだ。

「だから、俺がイザークを押し倒して抱いたって言っているんだ」

「抱いたって?」

「セックスしたって噂になっているんだよ。俺がお前を抱いたから、次の日、イザークは体が痛くて調子が悪かったんだって。イザーク、あの日、本当に体調悪そうで、やたら息切れしていたから」

俺は余りの事に気が動転してしまって、真っ赤な顔をして気まずそうに俺を見つめるアイツに向かって大声で叫んでいた。

「ふざけるな、この馬鹿!! 何で俺が年下の貴様に抱かれなきゃならん!! 普通に考えても俺が貴様を抱くのが道理だろうが!! それが何で俺が貴様に抱かれるになるんだ? いいか、良く聞け、アスラン。俺は貴様に婚約者がいようといまいと抱くのは俺だ。俺が上だ。わかったか、この腰抜けが!!」

俺の声は大きくて200メートル先まで聞こえると言われていた。

そして俺とアスランが話していた場所は学校の裏庭で200メートルの範囲内に校舎と中庭が有った。

 
「いよう、イザーク、終にアスランに告白したんだってな。これから色々と大変だろうが頑張れよ」

その日、夕食を取りに食堂に行った俺の肩をディアッカが軽く叩いてウィンクする。既に俺とアスランは校内公認カップルになっていた。



「ふざっけるなー!!」

それから暫らくの間、俺は散々、ラスティやディアッカにアスランとの事をからかわれ、その度に怒鳴り続けていた。

「もう、本当に困るから。俺、婚約者いるし」

しかも面白可笑しくからかう連中に腰抜けのアスランは困ったようにボソボソ答えるだけで、少しも役に立たない。くだらない噂が学校中に拡がっていて、俺は酷く苛々していた。

「アスラン、貴様、どうして、きっぱり否定しないんだ!! 貴様がきっぱり否定しないから、何時までもこんな馬鹿な噂が流される。それも噂に尾ひれ、背びれがついて、貴様が辛気臭い顔で溜息を一つ付くたびに俺の所為だといわれるんだぞ。少しは貴様もきっぱり否定しろ!!」

無責任に噂されて苛々が絶頂に達していた俺は、夕食のテーブルで終に切れて怒鳴りつけた。その俺の剣幕に周囲は騒然としたが、アスランはまるで意に解した風もなく、淡々と答えた。

「えッ、だって、俺、ちゃんと否定しているよ。大体、俺にはラクス=クラインという婚約者がいる事を皆、知っているんだし……。お前がムキになって騒ぐから、余計からかわれるんだ。少しは落ち着け」

「うっ、うるっしゃーい!! 貴様、少しは真面目に考えろ!!」

「へっ? 何を?」

 アスランは本当に分からないというように、目を見開いてキョトンとした。俺はその無防備で無神経な顔に怒りが爆発して、思わずアスランの襟首を掴み上げた。流石に後少しで卒業試験が始まろうという時期にアカデミー内での私闘は拙い。常に冷静なアイツがムッとして、襟首を掴む俺の手を引き剥がして、きつい声で言った。

「いい加減にしないか、イザーク。お前がそんな風に反応するから皆にからかわれるんだ。もう直ぐ卒業試験も始まるのに、こんな所で騒ぎを起こして減点されたいのか?」

そのアスランの冷め切った言いように俺は心底ムカついたが、俺は襟首を掴んでいた手を離した。俺もアイツも家名を背負っている。何としても赤で卒業しなければならない。だから、卒業試験を控えた時期に騒ぎを起こして減点されるわけにはいかなかった。

固唾を呑んで見つめていた連中がコソコソと下を向くのが見える。俺は苛々しながらも、何とか自分を抑えて席に座った。アイツも何事も無かったかのように着席して夕食を再開した。

「流石、アスラン!! イザークと違って落ち着いているー。でもさー、アスラン、イザークとの事、からかわれても、ラクス姫と婚約しているから拙いって言うだけで、ちっともイザークは男だからダメだって言わないねーん。アスランさ、男かどうかは問題じゃないのー?」

隣に座って食事していたラスティがニヤニヤしながら、アスランに訊いた。するとアイツは少し驚いたように目を見開いた後、困ったように頬を赤く染めてボソボソ答えたのだ。

「えッ、ああ、そう。……そうだな。イザーク、男だもんな。そうか、そういう風に否定すれば良かったのか!! 俺、ラクスと婚約しているのにどうしようと、そればっかり気になっていたよ」

「あ、そう。ハハハッ、何かアスラン可笑しいの。普通、イザークとやったって言われたら、男同士で有り得ないって否定するもんでっしょ。それなのに、婚約しているからダメだって言うだけなんだもーん。それってラクス姫と婚約していなかったら、イザークとOKって事なのかって、俺、焦っちゃったよ」

軽い口調でアスランをからかって、ラスティが水を飲んだ。アスランは本当に驚いたように大きく目を見開いていたが、やがて笑って言った。

「いや、ないな。だって、イザークととなんて考えられないよ。だって、イザーク……」

そこで何故か、アイツは言葉を切って赤くなった。

「何だよ。はっきり言えよ、アスラン。イザークの続き」

ディアッカがニヤニヤして、アスランに続きを聞く。アスランは意味ありげに頬を赤らめて俺をチラッと見てから下を向いて、ボソボソ言った。

「……あ、イザーク、せっかちそうだから、嫌だなって」

一瞬、同じテーブルについていたラスティ、ディアッカ、ニコルが固まった後、大爆笑し、俺は余りの恥ずかしさに席を立って怒鳴っていた。

「うるっしゃーい!! アスラン、この馬鹿、変態、軟弱者ー」

そして後も見ずに食堂から走り出て自分の部屋に帰った。だから、その後、食堂でどんな噂が流れたのか、今も知らない。ただ、俺の顔を見て気まずそうに目を伏せる生徒が何人もいて、俺は腹が立って堪らなかった。


それから一週間後、アカデミーの最終試験が始まり、忌々しくも優等生のアスラン=ザラが言い切ったようにアカデミー内はピリピリとした緊張に包まれ、くだらない噂は消えた。卒業試験が終われば、俺達は前線に配備される。



瓢箪から駒とでも言うのだろうか?

前線に配備されてから、俺とアイツはこっそり肌を合わせるようになっていた。へリオポリスでラスティが死んで、アイツは酷く落ち込んでいて眠れないと俺に泣きついてきたのだ。その酷く不安定なアイツを見て、俺の胸はざわめいた。こんな状況で卑怯だとも思った。でも、我慢できなくて泣くアスランを抱き締めてキスをしてベッドに押し倒していた。

「やっぱり、イザークが上なの? でも、いいよ」

どこか間抜けな事を言って、アイツはベッドの上で目を閉じた。俺は心の中で自分を卑怯者だと罵りながらも、目を閉じたアイツを優しく壊れ物を扱うように抱いた。


「イザークってさ、意外とせっかちじゃないんだな。こういうとき」

白いシーツの上に裸でしどけなく横たわるアイツに情緒の無い感想を告げられて、隣に寝ていた俺は目を見開く。

「なんか、もっと、ガツガツしていて、時間掛けないタイプかと思ってた」

余りにもあからさまな言いように俺は言葉を失った。それが抱き合った後も腕枕をし、髪を撫でている男への言葉だろうか。

「……貴様は本当に情緒が無いな。それがベッドの中で言う言葉か」

初めての夜から、俺とアスランは密かに肌を重ねるようになっていた。

アイツの青みがかった黒髪を撫でる手を休めずに皮肉ってやる。アスランは大人びた完璧な上辺とは反対にベッドの中では酷く甘えん坊で、終わった後も抱き寄せられて髪を撫でられるのを好んだ。

「……あっ、ごめん。そうだね。凄く良かったとか言うべきだった?」

俺の胸に顔を擦り付けながら酷く真面目な顔でアイツが訊くので、俺は脱力してしまう。

「……いや、いい」

「でも……」

俺が疲れて溜息混じりに言うと、アイツは困ったように目を伏せて尚もゴニョゴニョと言い募ろうとする。

「あー、もう、貴様、少し黙っていろ。折角の気分が台無しだ」

俺は尚も何かピントのずれた事を言おうとしている唇をキスで塞いだ。
 
 
 
**********************************************


・・・つい描いちゃいました。いや、もう描かないわけにはいかないな、と(笑)
私も、イザークは自分の懐に入れた存在にはとことん甘いのではないかと思います。
そして、アスランはいっぱい甘やかされればいいと思います!
そんな彼らにはピロートークなんて不要で、塞いじゃえばいいんですね(笑)
shinoさん、ありがとうございましたー!

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